過払い金|土地売買をしたのに所有権移転登記手続がされない


主文

1被告株式会社利根クリエーション(以下「被告B」という。)は,Dに対し,別紙物件目録記載の不動産について,平成9年2月7日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
2被告らは,原告株式会社群馬銀行(以下「原告」という。)に対し,各自金3185万6000円及びこれに対する平成10年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は被告らの負担とする。
4この判決は第2項に限り仮に執行することが出来る。

事実及び理由

第1請求

(主位的的請求)
主文同旨
(予備的請求ー主位的請求の趣旨1項につき)
Bは,Dに対し,別紙物件目録記載の不動産について,平成8年9月30日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

第2事案の概要

原告は,Dに対し,貸金債権を有している。
D(無資力)は,被告Bに対し,別紙物件目録記載の土地建物(以下「本件土地建物」「本件土地」「本件建物」という。)につき,平成9年2月7日の売買を原因とする所有権移転登記手続請求権を有している。
そこで,原告は次の請求をする。
1Dに代位して,被告BからDへの所有権移転登記手続を求める。
2被告Cに対し,同人の不法行為を理由として損害賠償請求する。
3被告Bに対し,被告Cの使用者であることなどを理由として損害賠償請求する。
4被告らの抗弁は信義則違反であり認められない(再抗弁)。
被告Bは,次のとおり主張して原告の請求棄却を求めた。
1Dは,被告Bに対し売買代金の未払があり,また,買主の地位の譲渡がある(移転登記手続請求拒否。抗弁)。2被告らには,原告主張の不法行為該当事実はない。
(争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実)
1Dは,勤務先会社・株式会社大信ホーム(商号変更後株式会社リビングガイド群馬,以下「勤務先会社」「大信ホーム」などという。)において,2500万円の横領事件を起こし,同社に対し,同額の損害賠償債務を負っていた(甲28,29,31)。
2Dは,上記横領事件による金員を注ぎ込んで8筆の農地(a市b町所在)の宅地開発をするべく,条件付所有権移転登記を受けている(甲34ないし42)。
3Dと被告Bとの間で,平成9年2月7日付で,本件土地建物を目的として,売買契約を締結し,買主Dは,被告Bに対し,本件土地建物の所有権移転登記請求権を有している。
4被告Cは,平成10年6月10日,A司法書士から本件土地建物の権利証等の登記関係書類の返還を受け,被告Bは,同月30日,同書類を利用して,本件土地建物につき被告B名義の所有権保存登記及び所有権移転登記をした(甲17,18)。
5被告Cは,不動産売買等を業とする被告Bの取締役であり,かつ,住宅建築等を業とするリビングガイド群馬(大信ホーム)の代表取締役(甲29)であって,住宅金融公庫の融資手続や銀行等によるつなぎ融資の仕組みについてはこれを知悉していた。
(原告の主張)
1被告Bに対する債権者代位権に基づく所有権移転登記手続請求
(1)被保全債権
ア原告は,平成6年5月26日,Dとの間で,要旨次のとおりの約定で金銭消費貸借契約を締結し,1480万円を貸し渡した(甲1ないし3。
以下「貸金その1」という。)。
1返済方法252回の分割払いとし,平成6年6月から毎月26日
限り5万3563円,平成6年9月から半年毎に増額返済分として21万8758円を上乗せして支払う。
2利息年4.4パセント(但し,銀行の長期貸出最優遇金利
の変動と同幅で変動する。)
3遅延損害金遅延している元金に対し年14パセント(1年365
日の日割計算)
イ原告は,平成9年8月27日,Dが被告Bから本件不動産(甲17,18)を購入するに当たり,Dが住宅金融公庫(以下「公庫」という。)から2320万円の融資及びH協会からの920万円の住宅貸付(以下これらを「公的融資」という。)を受けることを前提とする購入代金決済のための融資(公的融資の実行により貸付金を回収することが予定されたいわゆる「つなぎ融資」)として,Dとの間で,要旨次のとおりの約定の金銭消費貸借契約を締結し,3190万円をDに貸し渡した(甲4ないし6。以下「貸金その2」という。)。
1貸付金額3190万円
2返済期限平成9年11月17日
平成10年5月11日まで延期された(甲7,8)。
3利息年3.5パセント(1年365日の日割計算)
4遅延損害金遅滞した貸付元金に対して年14パセント
ウ貸金その1に基づく平成10年6月30日現在の貸付残高は1239万2290円であり,貸金その2に基づく同日現在の貸付残高は3185万6000円であって,原告はDに対し,合計4424万8290円の貸金債権を有する(甲3,6,32,33)。
(2)Dの無資力
ア Dは,平成10年6月30日現在,貸金その1,その2の債務合計4424万8290円の貸金債務を負っているほか,リビングガイド群馬(大信ホーム)において,平成10年6月8日ころ,横領事件を起こし,2500万円の損害賠償債務を負う(甲28,29,31)。
イDの資産は,貸金その1により購入した田2筆(a市c町字de番f・地積40平方メートル,同番2・地積165平方メートル。
甲10,11),貸金その2により,平成9年2月7日に被告Bから購入した本件土地建物がある(甲15ないし18)が,上記田2筆の評価は,固定資産評価で合計約542万円(甲14)であり,これには大信ホーム株式会社の1480万円の抵当権とリビングガイド群馬株式会社の極度額200万円の根抵当権がそれぞれ設定され(甲10,11),その余剰価値はなく,また,本件土地建物についても,固定資産評価額の合計は1546万5470円であり(甲19,20),これを売却しても,Dの上記債務を完済することは不可能であって,Dがリビングガイド群馬を解雇されていることからしても(甲31
),Dの無資力は明らかである(なお,甲34ないし42)。
(3)代位債権
アDは,前記のとおり,平成9年2月7日,被告Bから本件土地建物を売買により取得したので,同会社に対し,本件土地建物の所有権移転登記請求権を有している。
イDは,原告からつなぎ融資(貸金その2)で上記売買代金を完済し,被告Bから本件不動産の引渡を受け(甲9,21),また,本件不動産の権利証等の登記関係書類を受領していたところ,公庫融資を受けるためには,公庫への抵当権設定登記が必要であり,その前提となる本件土地の所有権移転登記,本件建物の表示登記,所有権保存登記を行うため,平成9年2月19日ころ,同登記関係書類を公庫の取扱店である原告に預けて同登記手続を委任した(甲22ないし25)。
ウ原告は,平成10年6月8日,同登記関係書類をA司法書士(a市g町h丁目i番j号所在)に預け(甲25),同登記手続を依頼したところ,同月10日,リビングガイド群馬(大信ホーム)代表取締役兼被告B取締役である被告CがAに対し,同登記関係書類について確認したいことがあると欺いて,これを自己の従業員をして持ち出させた(甲9,26,27,31)。
そして,被告Bは,同月30日,同登記関係書類を利用して,本件土地建物につき自己名義の所有権保存登記及び所有権移転登記をした(甲17,18)。
(4)まとめ
よって,原告は,Dが無資力であることから,Dの責任財産を保全すべく,Dが被告Bに対して有する本件土地建物の所有権移転登記請求権を代位行使し,被告Bに対し,本件土地建物について,D名義に所有権移転登記手続をすることを求める。
2被告Cに対する不法行為(債権侵害)に基づく損害賠償請求
(1)違法行為及び権利侵害
前記のとおり,被告Cは,Aを欺いて,本件土地建物につき前記登記をしたが,これによって,Dは,本件土地についての所有権移転登記,本件建物についての所有権保存登記を備えることが出来ず,また,公庫のための抵当権設定登記をすることが出来なくなった。
その結果,Dは,公的融資を受けられなくなり,原告は,Dが受ける筈であった公的融資を返済原資として貸し付けた貸金その2(つなぎ融資)の弁済を受けられなくなった。
(2)被告Cの故意
被告Cは,不動産の売買等を業務とする被告Bの取締役であり,また,住宅建築等を業とする株式会社リビングガイド群馬の代表取締役であって,当然,公庫融資の融資手続や銀行等によるつなぎ融資の仕組みについて知識を有しているところ,Dが本件土地建物を購入するに当たり,公庫とH協会から融資を受けること,そして,これらの融資が実行されるまでの間の代金決済資金として原告からつなぎ融資を受けていることを承知しており(甲31),被告Bが前記登記を行うことにより原告が貸金その2の弁済を受けられなくなることについて故意(少なくとも故意と同視すべき重大な過失)があった。
(3)原告の損害
原告は,平成10年6月30日,被告Bが本件土地につき所有権移転登記,本件建物につき所有権保存登記をしてしまったことにより,公的融資を返済財源とする貸金その2の返済を受けることが出来なくなり,貸金その2の同日現在の貸付残高である3185万6000円の損害を受けた。
(4)まとめ
ア被告Cが前記(1)の違法行為に及んだのは,リビングガイド群馬においてDの横領事件が発覚したことから,リビングガイド群馬の関連会社である被告B(取締役共通,本店所在地同一)において,Dの横領事件の穴埋めをさせるため,Dの資産である本件土地建物を無理矢理自己の名義にしようとして行ったものと思われるが(甲31),これはAに対する不法行為であるほか,原告に対する債権侵害の不法行為(民法709条)を構成する。
イよって,原告は,被告Cに対し,同被告が原告のDに対する貸金その2(債権)を侵害した不法行為に基づいて,3185万6000円及びこれに対する不法行為の日である平成10年6月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求める。
3被告Bに対する損害賠償請求
(1)民法44条1項による不法行為責任
被告Cは,被告Bの取締役であるが,同会社の実質的経営者として,会社印を管理し,その業務執行を担当していた(甲31)から,被告Bの業務担当取締役というべく,あるいは,事実上の代表取締役というべきである。
そして,被告Bは,被告Cが前記2の不法行為を被告Bの業務執行として行ったものであるから,商法261条3項,78条2項,民法44条1項により不法行為責任を負う。
(2)民法715条による不法行為責任
仮に被告Cが被告Bの業務執行担当取締役ないし事実上の代表取締役と認められないとしても,被告Cは,被告Bの被用者というほかなく,被告Cの前記不法行為につき,被告Bは民法715条の使用者責任を負う。
(3)まとめ
よって,原告は,被告Bに対し,被告Cの前記2の不法行為につき,商法261条3項,78条2項,民法44条1項に基づいて,あるいは民法715条に基づいて,被告Cと連帯して(不真正連帯)して,3185万6000円及びこれに対する不法行為の日である平成10年6月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
4被告の抗弁は争う。
5原告の再抗弁は別紙のとおり。
(被告の主張)
1原告の主張(請求原因)に対する認否反論は別紙のとおり。
2被告の抗弁は別紙のとおり。
3原告の再抗弁は争う。
(争点)
1原告のDに対する債権の存否
2Dの無資力性
3Dの被告Bに対する登記請求権の成否
4Dの被告らに対する損害賠償請求権の成否
5損害額

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第3当裁判所の判断

1証人I,同D,同A,被告C及び関係証拠(甲1ないし43,44の16,乙1ないし3,9,10,丙1ないし4等)によれば,次の事実が認められる。
(1)I,関係証拠(甲9等)によれば,以下の事実が認められる。
アIは,平成9年4月1日から原告前橋住宅ローンセンター長をしているが,原告は,Dに対し,原因主張の2つの貸金を有している。
1つは,1480万の住宅ローン,2つは,3190万円のつなぎ融資であるが,後者は,住宅金融公庫による融資を実質上の担保として貸与するものである。
イ平成9年2月ころ,原告に対し,Dから本件つなぎ融資申込がなされ,同月10日ころ,本件土地建物売買契約書(甲15)の提出があり,同年8月27日の本件つなぎ融資の実行となったが,同契約書には,売買代金4130万円,売主被告B,代表取締役C,買主D,(書類作成者)取引主任者Dの各名前があり,また,平成10年6月1日ころ,D宛平成9年8月27日付被告B名義領収証(金額2950万円)が原告に提出されている(甲44の1)ところ,本件売買においては,公庫により目的不動産(本件土地建物)に抵当権が設定されて,融資がなされ,これがつなぎ融資への弁済に回ることが予定されていたけれども,本件土地(所有名義J)につき相続関係(被相続人K)がらみ等でDへの所有権移転が進捗しなかったため,本件
つなぎ融資の弁済期限も2回程延期となり,所有権移転確認の趣旨で上記領収証徴求措置が取られた。
ウ平成10年5月ころ,原告(公庫代理店)は,本件土地につき,JからDへの名義移転,公庫のための抵当権設定登記事務をA司法書士に委任し,J名義の権利証,印鑑証明,委任状等がAに交付され,建物については,既に,平成9年10月29日,D名義(保存登記)となっていたけれども,その後,県年金福祉協会からの融資の関係で,既登記の抹消と改めての表示,保存両登記が必要となり,平成10年6月8日ころ,改めて,Aに対し登記手続の依頼がなされた。
エ上記Aによれば,平成10年6月8日ころ,1週間位すれば手続が済む筈であったところ,原告宛手続完了通知がなく,原告において,Aに事情を聞いたところ,被告Cから直ぐ返すことを条件に登記関係書類一式の返還(返戻)要請があり,同月10日,同返還がなされたものである(丙1,2)。
オ上記返還の経緯につき,Dが同月22日ころ述べたところによれば,当時,被告Bにb所在土地の分譲計画があって,Dは,地上げ等に関与していたが,計画取り止めとなり,地主との板挟み的立場から資金必要を来たし,被告Bの金銭を流用するに至ったところ,Dの被告Bへの責任に関連して,上記返還要請及び実行となったものである。
カなお,Dの上記説明によれば,前記契約書上,代金は4130万円と記載されてあったが,実際は,価額はより低額であったところ,公庫融資が代金額の一定割合となっていた関係で,代金額を高くして,高額融資が図られたものであった。
キDは,本件不動産とは別の原告主張にかかる土地を有しているが,これらには他の抵当権が設定されているなどの状況にあり,要するに,Dは無資力状態である。
(2)D,関係証拠(甲22,31等)によれば,以下の事実が認められる。
アDは,平成10年7月初め,大信ホームを解雇となったが,大信ホーム及びその関連会社大信工業の代表者はいずれも被告Cであり,Dが本件土地建物を購入するに当たっては,被告C,被告B代表者がともに関与していたところ,本件建物建築については,大信ホームがこれを実施したこと等から,被告CがAへ前記電話をしたものである。
なお,Dの認識としては,大信ホーム,大信工業,被告Bは同一建物内で営業し,被告Cが被告Bの実権を握っていた
イDは,前記のとおり,平成9年2月ころ,本件つなぎ融資(3190万円)の申込をし,同年8月27日ころ,当該融資を受けたが,同年2月10日付本件売買契約書上,代金は4130万円と記載され(甲15)ている。
なお,Dは,当時,被告B,大信ホーム双方の仕事に従事していた(乙9)。
ウDは,平成10年6月ころ,被告B名義の平成9年8月27日付領収証(2950万円)を原告に提出した(甲44の1)が,同日ころ,被告B経理担当者に懇請して,実際とは異なる金額の記載により発行して貰ったものであるところ(甲31,乙9),これより先の平成9年6月ころ,本件建物は完成し,Dにおいて入居済みであり,当時,Aに依頼してD名義に保存登記したものである。
なお,本件土地については,J名義であった関係で,Dへの移転登記は予定より遅れた。
エDは,Aとは20年来の知合いであるが,前記のとおり,平成9年6月ころ,先ず建物の保存登記をして貰い,次いで,原告からのつなぎ融資返済の必要上,本来の融資先である公庫のため,本件土地建物への抵当権設定等の登記をAに依頼したが,平成10年6月ころ,Dによるリビングガイド群馬(大信ホーム)の金員横領の事実が発覚し,被告B,大信ホームにとって,本件土地建物名義のDへの移転を防止することの必要に迫られたことから,被告Cにおいて,Aに対し,前記のとおり,用済み次第返還することを条件に同人所持の本件登記関係書類の返戻を求めた。
そして,D自身,本件登記書類の返還に同意(了解)を与えた。
オDは,原告からの本件つなぎ融資(一部,上記b関係購入資金に投入)に関連して,前記のとおり,契約書では売買代金4230万円とあるが,本件土地建物にかかった実質金員は2683万円位であった。
(3)A,関係証拠(丙1,2等)によれば,以下の事実が認められる。
アAは,平成10年6月8日,原告から,本件土地につき,JよりDへの所有権移転,建物の改めてのD名義保存登記(最初のD名義登記の抹消)の依頼を受け,上記登記関係書類(権利証,印鑑証明書,委任状,住所変更委任状。
甲27)を預かったが(丙1,2),同月10日,電話による前記やりとりの後,同書類を被告Cに返却(返還)したものである。
そして,同返却(返還)の結果,本件土地は,平成10年6月1日売買で被告B名義に所有権移転登記(甲17)が,本件建物も,やはり被告B名義に所有権保存登記(甲18)がそれぞれなされている(いずれも同月30日登記受付)ところ,被告Cとの前記やり取りの末,同被告の使者として,Nが取りに来たが,同人から同年6月10日付受取書(甲27)を受領しており,同受取書
には,「被告Cが責任をもって,6月18日(木)ころ返却する。」旨の付記がある。
イ本件建物については,前記のとおり,平成10年6月,D名義の表示登記がなされたが,Aは,原告から,公庫と年金福祉事業団の融資を受けるため,早過ぎた表示登記,保存登記の抹消と再度の同登記が必要と言われ,平成10年6月9日受付抹消(原因,錯誤)手続をなした(丙3)が,翌10日,被告Cから電話で,D名義にするための書類の有無を聞かれ,次に,確認事項の存在を理由に同書類の同被告への貸与要請があったけれども,Dにおいて,原告(土地),D(建物)からの登記依頼を理由に要請を断ったところ,再度,同日,返還約束を条件とする貸与を懇請され,同時にDの電話了解もあり,同被告への返還(一時貸与)に同意した。
ウAは,平成10年6月15日,被告Cに対し,上記交付書類の返還を求めたところ,同被告から,Dとの話し合いが済み次第返還すると言われ,同月18日,再度同被告を大信ホームに訪ねたが,会えず,結局返還して貰えなかった。
Aは,抵当権被設定者Dの了解と被告Cの上記約束があり,同被告が必ず上記返還約束を守ると述べたことを信用したが,裏切られた気持ちである。
(4)被告C,関係証拠(乙9,10等)によれば,次のとおりである。
ア被告Bは,Dとの間で,本件土地建物の売買契約を締結し,平成9年8月27日ころ,被告Bに代金の一部1750万円の支払がなされたが,これは公庫の中間金との認識であり,原告銀行のつなぎ融資からの支払であるとの認識はなく,残金933万円余は年金福祉事業団から支払われるとの認識であった(乙6)。
イ平成8年9月30日付本件土地建物売買契約(乙1)の売主は,被告Bであるが,契約は,被告Cがこれを行い,土地名義は被告Cの兄Jであったが,同人は取引に直接は関与しておらず,Aへの前記書類の交付要請(平成10年6月10日)も被告Bから付与された権限の行使として,被告Cにおいてなした。
なお,本件土地はJ名義であったが,既に実質被告B(当時代表者K)に所有権移転済みであり,登記未了であったに過ぎず,Dから購入希望があって本件売買となった。
ウ本件売買については,金額,日付が異なる別の契約書(甲15。
前記)があるが,Dが被告Bの印を使用する等して別に作成したものと推測されるところ,売買価額4130万円は実際の価格ではなく,Dにおいて,公庫との関係等で価額を水増ししたものというべく,平成9年8月27日ころ,Dの求めにより,被告Bは同日付2950万円の領収証(甲44の1)を発行した。
エ被告Cは,Dの原告主張にそう陳述書(甲31)について,同人に問いただしたところ,Dは,内容が虚偽であることを認め,上記陳述書訂正取消文書(乙9)を提出したものであるところ,平成10年6月10日,被告CがAに電話した当時,Dによる横領の件があり,同問題が解決次第,即ち,1週間の約束で前記登記関係書類の返却をして貰うとともに,Dから,同年6月9日,株式会社クライム本社建設工事代金2500万円につき,同月15日までの支払約束書面(乙2)を得ており,翌10日,上記支払が期待されたものの,不払いも考えて上記登記中止実行の行動に及んだ
オDは,平成10年6月12日,大信工業宛文書(乙3)で,同月15日までに上記2500万円不払いの場合,本件土地建物の売買契約上の地位を同工業に見積価格1750万円として譲渡し,不足分の支払もする旨誓約しているが,被告BはDとの契約を解除して支払済み1750万円の返還を求める方法もあったけれども,横領金員返済約束がなされたため,Dによる支払を信用し,解除はしなかった。
2以上1に認定の事実及び関係証拠並びに弁論の全趣旨に基き,以下のとおり認定,判断し,被告Cの供述中これに反する部分は採用しない。
(1)原告はDに対し,平成10年6月30日当時,原告主張の貸金その1(1239万2290円),貸金その2(3185万6000円),合計4424万8290円の債権を有していた。
(2)Dは,平成9年2月7日(甲15),被告Bから,本件土地建物を買い受け,平成9年9月ころ本件建物に居住を始めたが,買い受け資金として,原告から,平成9年8月27日,3190万円(貸金その2。
つなぎ融資)を借り入れ,その頃,本件土地建物の売買代金2650万円(乙1)の一部として,同日ころ1750万円を被告Bに支払ったものであるところ,貸金その2は,いわゆるつなぎ融資であり,被告B,D,原告間では,売買代金完済前に本件土地建物の所有名義をDとし,Dがこれを担保として抵当権設定して,公庫から融資を受け,当該融資金をもって原告からのつなぎ融資の返済に当てることが合意されており,同合意に基づき,公庫融資の代理店の原告において,上記所有権移転(土地),保存(建物)及び抵当権設定の
各登記がなされるべく,被告B,Dも承知のうえ,平成10年6月8日,A司法書士に登記に必要な書類を交付して,上記担保(抵当権)設定手続を依頼していた。
(3)しかるに,平成10年6月10日,被告Cは,被告Bから付与された権限の行使として,Aに電話し,上記抵当権設定等登記手続関係書類の返却を要請し,Aは,Dの了解もあったため,1週間で返却するとの約束を得て,上記書類を被告Cに返却(返還)したものであるところ,被告Cは約束に反し,書類返却を期限内(同月18日まで)にせず,当時本件土地につき名義人のJから被告B名義にし,本件建物についても同会社名義(表示,保存登記)となし,結局,Dは,公庫融資を得ることが出来ず,その結果,原告は,Dへの融資金の返還を受けることが出来ない事態となった。
(4)被告Cは,当時,建物建設,土地売買に関し,金融機関からの融資を受ける方法,順序等を知悉しており,Dが原告からつなぎ融資を得て,公庫から対象物件を担保に融資を得て,当該融資金でつなぎ融資金を返済する手筈になっていたことは充分知っていたものというべく,したがって,被告Cの上記電話によるAに対する返却要請行為は,Aをして1週間で返却されるものと誤って信じさせ,関係書類を返還させ,もって,原告のDからの融資金返済を不可能にさせたものと評価せざるを得ない。
(5)Dは,株式会社大信工業に本件買主の地位を譲渡しており,その点では,Dの被告Bに対する購入者としての本件不動産の移転登記手続請求権は喪失していること,売買代金の一部が未払いであることは被告ら指摘のとおりであるが,上記のとおり,被告らは,通謀して,故意に原告が公庫代理人として,本件不動産につき公庫に抵当権設定等登記手続をすることを妨害し,もって原告に損害を与えたものであり,被告らがDの上記地位の譲渡や一部未払いをもって,被告Bに対する登記請求権を否定するのは信義則違反として許されないというべきである(不動産登記法4条参照)。
(6)以上により,以下のとおり判断する。
1原告は,Dに代位して,被告Bに対し,本件土地建物のDへの移転登記手続請求を求めることが出来る。
2被告Cは,上記妨害行為(不法行為)により,原告のDからの融資金返還請求権を喪失させ,同融資金相当額3190万円の平成10年6月30日現在の残額3185万6000円の損害を原告に与えたというべきである。
3被告Bは被告Cの使用者として民法715条の責任があり,同額の損害賠償支払債務を負っている。
(7)そうすると,原告の被告らに対する本訴請求(1項については主位的請求)は全部理由がある。

第4結論

よって,原告の本訴請求を認容することとし,主文のとおり判決する。

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